看護部長あいさつ

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いのち・暮らし・尊厳を守り支える看護

医療法人昨雲会 有隣病院

院長補佐
看護部長
入退院支援センター副センタ―長

高橋 信江

「誰にも迷惑を掛けずに生きていきたい・・・」こう話して人生の幕を閉じた高齢の患者様を今でも忘れることができません。「年をとると人の手が必要で、周りの人に迷惑をかけてしまう。申し訳ない・・・」とわたくしに胸の内を語られました。人生100年時代。大正から昭和期と激動の時代に日本という国を命がけで守り抜き、支え、この豊かな時代へと繋いでこられた患者様に私達はどんな看護を実践していけばよいのでしょうか。

医療が発展した現代においても、私達は80歳の身体を体験することはできません。自分の思うことが相手に伝わらない、動きたくても動けない、高齢者は何を考え、何を思うのでしょうか。年を重ねると今まで「できた」ことが「できない」と引き算をします。しかし、視点を変えれば、今まで人の支えが「なかった」ことが「ある」となりこれは足し算です。高齢社会における臨床看護は、尊い「老い」という「未知との遭遇」を患者様から教え導かれ、長い人生を生き抜いてこられ患者様の数だけ、看護の教科書が存在します。

地域完結型医療の時代になった今、高齢者が医療から暮らしにお戻りになるためには医師だけの医療では解決しないことがあり多職種の力が必要です。看護部が中心となる入退院支援センターを開設し、看護・介護・福祉の3側面から継続的にアセスメントする有隣システムで退院支援を実践しています。職種、部門の垣根を超えたチーム医療の実践です。医療も解り、介護・福祉にも関心のある看護師、チーム医療のキーパーソンとして活躍できる看護師の育成は、この地域でいのち・暮らし・尊厳をまもり支える看護の実現です。

病気や障がいなど人生の途上で出会う困難は誰もが経験し、人はいつでも支えられ生きていることを実感します。患者様から学び、多職種から学び、看護師の使命を担うことは未来社会へと繋がる可能性への追求となります。 
地域包括ケアシステムにおけるトータルコーディネーターの役割果たす看護の力を学び、安心して老いていける町を一緒につくっていきませんか。

師長室より

私たちが大切にしてきた看護
終わりのないストーリー

有隣病院

外来統括師長

佐藤久仁子

膵癌の終末期の患者様は、食欲もなくほとんど食べられない状態でした。妻に負担を掛けたくない、桜の花も見る事も出来ないなと話されました。卒業証書を手にしたお子様、真新しい高校制服姿のお子様の姿を見た患者様の眼には大粒の涙がこぼれていました。そして、スタッフ手づくりの花で飾られた病室では家族に囲まれ誕生日のお祝いができました。やがて春が訪れ、美しい桜を眺めながら家族に見守られ旅立たれました。看護は人生の最期まで生きることを支え、生きるすばらしさを教えてくれる素晴らしい仕事です。

高齢の患者様は長期にベッド臥床で過ごしていたため足は伸展していました。ある日その患者様が「トイレに行きたい」と話されました。この訴えにどう対応するか、看護師・理学療法士・医師・ソーシャルワーカーでカンファレンスを開き多職種で安全に移乗する方法を検討し便座に座ることができました。排泄はなかったものの、「ありがとう」と話したあの時の笑顔は忘れることができません。排泄はトイレで行いたいと誰もが思います。人間の基本的欲求にどう対応するか。患者の訴えに耳を傾けてどう寄り添うか。私だったら、どうしてほしいかを考え看護を実践しています。

有隣病院

病棟統括師長

橋谷田とよみ

有隣病院

患者支援医療連携統括師長
入退院支援センター副センター長

高畑かおり

「毎日」という時間が創造する「老い」とは、想い出が増えていく過程でもあり、生が死に近づいていく過程です。超高齢社会において、治療だけでわが家に退院することは至難の業です。看護は「老い」という未知なる命の営みに常に向き合っています。まさに老年看護は高度な専門的知識と熟練した洞察力と技術を要する継続的・包括的な看護の力量が問われる分野です。ここで生活をしている患者さんは町の未来そのものだと思います。患者さんを大切に思う職員ひとり一人の力が、困っている今を希望の明日につなぎとめています。
私たちは、これからも大切な命をこの町の未来に繋ぎつづけてまいります。